漢達の週末 ２

興奮を鎮めるために見たはずの2002年ツールDVDのせいで、逆に寝付きが悪くなってしまった。ただ今日の朝だけは遅刻は許されない。5時にalarmをセットしておいたがぐずぐずと二度寝してしまい、ついつい時間が無くなってしまった。

松濤の自宅は山手通りに向かって登っている斜面に建っているので、半地下室は事実上北側の道路に面していて、ガレージと隣り合わせになっている。音響設備の整った半地下室からガレージはクリアウィンドーを通じてお互いよく見えるようになっており、アウディRS6アバントと、最近すっかり出番が無くなってしまったアルファロメオ75twin spark（今となってはクラシックカーの部類に入る）がオブジェとしてよく手入れされたボディを輝かせている。

そのガレージの東側にちょっとしたオープンスペースがあり、ここが所謂バイクのトレーニングルームとなっている。ガレージだけで80平米くらいあるので、エアコンの効きが悪いのが気になるが、最近業務用の大型ファンを導入したおかげで、ローラー台トレーニングもそれほど苦痛ではない。

山手通り側の南側のエントランスは事実上二階部分となっていて、ここからバイクを出すのは面倒。結局ガレージからバイクとともに出掛けることとなる。

二階のダイニングで軽めの朝食を摂った後、地下のバイク室に下りてLightweightに張ってあるcarbon compにエアをいつもよりやや低めに張り、チェーンにオイルを垂らしてから出発。

EPSとDi2の相性は非常に良い。集合場所までの僅か1kmのライドでそれを実感する。
集合場所に僕が指定したのは246と旧山手通りの交差点にあるレクサス前。

集合時間の6時に集まったのは僕以外に以下の6人。いずれも生活臭のしない猛者ばかりだ。

◇び〜ん

広島の老舗料亭「佐々豆」の三代目。二代目までは広島市内の店舗展開にこだわっていたが、自ら東京に進出。広島名産の素材を生かしつつ、あまり首都圏で流通していない地酒を独自のコネクションで確保し、都心の一等地を中心に店舗展開を図った結果、現在は都心に6店舗を構え、年商24億円までに成長させた。バイクの走りは熱く、我々のリーダー的存在。広島に家族を残し、東京では独身生活を満喫している。

◇エムキップ
政府系長期信用銀行から早々と転職し、現在はブティック系外資ファンドの在日MDを勤める。50名のスタッフを操り、プレースメント業務に止まらず、独自の商品開発と投資家からの信任をベースに業績を拡大、アジア全域の投資活動を統括する。かつては実業団登録選手だったが、今は多忙のためレース活動は休止中。独身を貫き、都心のマンションの最上階ペントハウスに一人で生活中。

◇キングM
学生時代ボートで一世を風靡した人。早くから不動産業界に身を投じ、若い頃は不良債権のバルクセールなど危ない橋を渡ったことも幾度もあったが、持ち前の風貌と体力で確実に実力を身に付け、現在は不動産アセットマネージメント業務を専業とする堅実な会社を経営する。若い頃バブルな生活にはまった後遺症もあり、家庭とは縁遠い生活をかれこれ20年送っている。重量級なのにヒルクライムが得意。

◇マックス
九州北部で伝説の暴走族「筑北連合」の初代総長。身体は小柄だが、強靱な体力と負けん気の強さであっという間に九州北部を制圧、一代で伝説の男になった。ところが18歳になるとあっさり暴走族の世界から身を引き、もともと定評のあったバイクさばきに磨きを掛けるためにオートバイレースの世界に。GP選手権にも度々顔を出す程までになったが、最近現役を引退、現在はレースチーム「K-Max」の代表を務める。もとレディース代表の彼女と結婚したが、現在は独身。

◇KAT

伝説のスキーヤー。長野オリンピック大回転日本代表。大会で膝を痛め、スキーの世界から足を洗い、リハビリで始めたロードバイクにはまる。長身を活かしたダウンヒルとスキーで鍛えたコーナリングには誰も付いていけない。現在は欧州系医薬品メーカーの日本代表を務める。長野オリンピックで日本代表チームのコンパニオンをつとめた元モデルの奥様が自慢だが、時間に縛られない自由な生活を満喫している。芝浦ウォーターフロントの最上階が住まい。

◇デビルマンE
全日本ロード選手権で入賞経験のある実力者。そんな実績は一切口には出さず、草レースやショップ系チームにちょくちょく顔を出しては道場破りを繰り返す生活をしている。ソフトウェア開発会社を立ち上げ、現在年商36億円。近々上場を検討している。

（続く）